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【前回】 入居当時、爺さんには、奥さんがいました。
腕の良いシャツ職人だった爺さんは、奥さんと一人息子の為に、
毎日..毎日..骨身を惜しんで働き、
お客が喜ぶシャツを、一枚..一枚..手作りしていたそうです。
おりしも..時代は、バブル期へ突入。
日本国中が、お金を湯水のように使って、消費社会を謳歌していました。
爺さんのお店も、その泡ブクの恩恵を受け、高い生地をふんだんに使った特注品を、
おしげもなく注文してくださるお客さんが、断り切れないほど押し寄せたそうです。
口コミでお客さんも増え、従業員の数も増え..順風満帆の日々でした。
数年後、
息子の..成人とともに、バブルも消えました。
それまで、あんなに高級なシャツを注文してくれたお客さんは、
いつの間にか..何処かに消えていなくなりました。
たくさんいた従業員も、抱えきれなくなり..
ひとり..また..ひとり..と、店を後にしました。
それでも、無茶さえしなかれば、
夫婦二人が..十二分に食ってゆけるだけの稼ぎがあったそうですが、
もともと"飲んべえ"だったのか..はたまた.."スケベ"だったのか.. (^^;
景気の良かった時代が忘れられない言い訳を、酒と女遊びのせいにして、
それらに傾いていくにつれ、お店も傾いて..潰してしまいました。
子育ては終わっているけれど、
これから夫婦二人で..って時に、大きな借金を抱えてしまった爺さん。
お酒はともかくとして、女遊びが過ぎた理由で、奥さんとも協議離婚。
その時のドタバタで、息子とも縁遠くなってしまいました。
それでも爺さんは、食っていかねば..なりません。
..っていうか、
うちのマンションの家賃..払って貰わないと困るしぃ ヽ(ー"ー;)ノ
職を転々と変えながらも..それからの数年は、なんとか食いつないでいたようです。
実際のところ、家賃滞納も無く、いつお会いしてもこざっぱりとした服装で、
なかなかダンディーな爺さんでした。
このまま..平穏な日々が、ずっと続くように思われました。
しかし、人間は、平等に年をとります。
爺さんも..60歳を越える年齢になってしまいました。
バブル崩壊後の不景気から脱出しきれない日本は、
いよいよ抜き差しならぬ状況になってきました。
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